身近にいそうな誰かの人生観をはじめとしたキャリアストーリーをお届けするインタビュー記事。第25回は、外資系大手製薬会社、外資系コンサルティングファーム等での勤務経験を経て、輝きながら働くNobuto.Oさん。環境によって自身が変わる経験を積み重ねて、チャレンジすることへの楽しさを見出すに至った経緯を語ったいただいた。
環境によって人は変わるという大切な学び
教育熱心で保守的両親に育てられたこともあって、子どものころに自分の意志で「やりたいこと」をまわりに積極的に示したことはありませんでした。
習いごとも7つぐらいかけもちしていましたし、「反抗期って何ですか?」ってくらい、とにかく従順な子どもでしたね。とにかく、まわりの期待に応えたいという思いが強かったと記憶しています。
そんなこともあり、昔は人前で話すのが苦手でした。自分の思ったことを素直に伝えられず、まわりの視線を気にしながら意見に同調することでポジションを確立していた感じです。
素直に思っていることを伝えると損をする気がして、人とそつなく付き合うためにはその方がいいんだと思い込んでいました。
広く浅く人と付き合うのがラクだったんでしょうね。高校までずっとこんな性格でしたから、まわりからは陰キャだと思われていたと思います(笑)。
それが変わったのは大学に入って、いろいろなバックグラウンドを持つ人に出会ってからですね。
国籍も見た目も価値観も多種多様で、高校までの画一的な付き合いとは正反対の環境でした。
起業家や映画監督を目指す人がいたり、みんな個性的で刺激的。そんな友達と付き合っているうちに自分も何かにチャレンジしたいと強く思うようになりました。
これまでも「○○をやりなさい」と言われたら完璧にやりきっていたつもりですが、「これがやりたい!」と自分の内側から湧き出る熱い想いはまったくありませんでした。
この点がコンプレックスで、変化することを恐がっていたからこそ、いろいろな友達との出会いで一気に「変わりたい!変えたい!よし、変わる!」と思えたのかもしれませんね。
じゃあ具体的にどうしよう、ということで思いついたテーマが「海外」でした。
これまで新婚旅行を除いて、海外に行ったことがない両親の下で育ってきましたので、語学を習得する必要性をプレゼンして、語学留学という名目で大学1年の夏にカナダのバンクーバーへ行くことにしました。
初めての海外経験です。
これだけでも当時の自分にとってはとてつもないチャレンジだったんですが、実際に海外の空気に触れてみて何か感じたんでしょうね。
語学学校に1カ月通った後、アメリカに渡ってそのまま南米のペルーまでバックパッカーをしてみました。
このことはいまもまだ、親に言っていません(笑)。
初めての街で初めての人と出会い、語り、笑い、感情をそのままぶつけてみたら、まわりが受け入れてくるという素晴らしい経験ができました。もちろん勇気がいりました。
でも自分が動いたことで環境が変わり、環境と人とが自分を変えてくれるという初めての経験から自信が生まれて、ありのままの自分の性格でいられるようになったと思います。
やりたいことに向き合うことで沸き起こる想い
帰国後、次の「やりたい!」を考えたとき、いろいろな人と出会い、その想いや価値観を伝えるジャーナリストという仕事に興味が出てきました。
そこで、中東問題に取り組むジャーナリストの方が助手を探していることをTwitterで見つけ、連絡をしてみたところ、お手伝いをさせてもらうことになりました。
大変さもありましたが、初めて触れた世界、仕事内容がとにかく面白くて、興味の幅がぐっと広がりました。
その後は、とある起業家との出会いからビジネスの領域にもチャレンジしたいと思い、ベンチャーキャピタルのインターンを見つけてアプローチをしました。
インキュベーションオフィス事業(※注釈1)に新たに入居する起業家の方々にインタビューし、その事業の魅力を外部に発信するという仕事だったので、、ジャーナリストのアシスタントとしての経験もかなり活きました。
結局、半年で100名ぐらいの方にお話を伺うことができ、本当に充実した時間を過ごせました。
その後、大学3年生のときにアメリカのオレゴンに1年間の交換留学をすることにしました。
英語を完璧に習得したいという思いから、日本語を話さない&英語漬けの環境を作ろうと、ルームメイトはアメリカ人にして欲しいと交渉しました。
海外からの留学生と交流を持つことで多様な価値観を学ぶことができました。
帰国後、バイリンガル人財向け就活イベントの「東京キャリアフォーラム」に参加しました。
当時は東日本大震災の直後という社会環境に加えて、大手企業の就活が大方終盤に差し掛かっている時期だったことも焦りもありましたが、幸いにも数社から内定をもらうことができました。
就職活動のポイントは「グローバルに働ける環境」、「継続的に成長&チャレンジできる環境」、「ダイバーシティを尊重している環境」の3つ。
面接を通じて話した社員の方から、5~10年後に思い描いている自分像と近しく、3つの視点にマッチしていた外資系大手製薬会社のコンシューマー部門に入社することにしました。
人・組織をどう考えていくか、変えていくか
1年目に配属されたのは外資系の小売店を担当する新設部署でした。
アメリカ本社とのやりとりが頻繁にあるグローバルな環境で、女性マネージャーがバリバリ働いていたり、メンバーの国籍も多彩でダイバーシティに富んだ環境でしたね。
データ分析やコンサルティング方の営業など、これまで触れたことがないビジネススキルを身につけることができましたし、毎日が刺激的で本当に楽しかったです。
就活の際に、大切にした3つのポイントを満たしてくれたことも日々の充実感にもつながりました。
そんな中、2年目で大阪に転勤が決まり、地域ドミナント型(※注釈2)の薬局を担当することになりました。
大阪勤務とはいえ、四国や九州、沖縄エリアが担当となり、ホテル暮らしが続き、次第に孤独を感じてしまいました。
加えて、大阪オフィスのメンバーはほぼ男性で、価値観も画一的なモノクロな環境で、1年目とは正反対の環境でした。
高校生のころのように自分の感情をおさえつけ、だんだん萎縮するようになってしまいました。
環境が自分のモチベーションに影響を与えてしまうということを、あらためて認識した時期でした。
同じ会社とはいえ、一緒に働く人や社内の環境によってポジティブにもネガティブにも人が変わってしまう自分自身の経験から、私が強く関心をもっていることは「人や組織」にか関することであり、その分野を仕事にしていきたいと思うようになりました。
自分の想いを達成できる仕事を調べていく中で、組織の意思決定者に近いところで仕事ができるコンサルティングファームしかないと、外資系コンサルティングファームの人事・組織チームに転職することにしました。
当時、相談に乗り、会社を紹介してくれた先輩にはいまでも感謝をしています。
いろいろな業界の人たちと仕事をする中で、ビジネスを俯瞰する視座の高さや視野の広さ、業務の精度などを磨けたと思います。
プレッシャーもありましたが、毎日が文化祭の前日のような感覚で、「チームがベストの状態でやり切ること」を徹底する働き方に新たな楽しみを見出しました。
とにかくチャレンジを続けること
あっという間に3年が経ったある日、尊敬している上司からプロジェクト終了の2ヶ月後に退職することを告げられ、その転職先へのお誘いを受けました。
同じ会社に付いていきたいとの想いもありましたが、とある企業に常駐しながら人事を担当していた経験から、企業内人事にチャレンジしてみたいという想いが芽生えており、挑戦してみることにしました。
「グローバルに働ける環境」、「継続的に成長&チャレンジできる環境」、「ダイバーシティを尊重している環境」という就活のときと同じ、私にとって重要な3つのポイントを叶えられる外資系投資銀行と巡り合い、転職を決意しました。
そこではアジアパシフィックエリアの福利厚生担当として入社をしましたが、1年半ほど経ったときに「新卒採用をやってみないか」と声をかけていただいて、チャレンジしてみることになりました。
最初は手探りでしたが、これまでの経験の総括といえるほどパッションを持って取り組める仕事でしたね。
新卒採用は、私が大学時代に肌で感じた「環境によって人は変わる」ことを学生に発信でき、彼ら彼女らの人生に深く関われる仕事でした。
新たな採用の企画を積極的に立ち上げ、実践、運用するなど、時間を忘れて仕事に打ち込んでいました。
ただ、私の前に新卒採用をしていた産休中の同僚が復職することになって、この業務から離れることになりました。
新卒採用の仕事を続けたいという想いを強く持っていたときに、たまたま前職の同僚と食事に行く機会があり、「新卒採用のポジションが空いてるけど、受けてみたいか」という話を頂きました。
前職のコンサルティングファームは、会社が嫌になって退職したわけでもなく、むしろ会社やそこで働く人は大好きでした。
面接は順調に進み、ありがたいことに人事担当者として古巣に戻ることになりました。奇遇な話ですが、これも何かのめぐり合わせかもしれませんね。
現在担当しているのは新卒採用だけでなく、新卒向けのレーニングも含まれています。もともとコンサルタントとして働いてきた経験もありますので、社員教育には何が必要かも提案しやすく、ビジネスにより近い立場で働くことができていると考えています。
また、私が大切にしているダイバーシティ&イングルージョン(※注釈3)に関する業務も担当していることもあって、「すべての社員が働きやすさを感じる制度設計をしたい」、「入社した人が輝ける環境づくりを進めたい」──そんなことを心がけています。
いまは日本の担当ですが、いずれはアジアパシフィックエリアの統括マネージャーなど、さらに上のポジションを狙っていきたいと強く思っています。
いまの会社は多様な人が働いていて、多様な価値観を認めてくれるため、とても居心地が良いです。
いい人が多く、プライベートでも仲良くしてる人もたくさんいますよ。
そんなことからも、自分にとって大切なのは「一緒に働く人」と「働く環境」だということにあらためて気づき、幸せな気持ちで働けています。
何をしても無駄なことは一つもありません。
とにかくチャレンジを続けること。そのうちに点と点がつながり、自己理解が深まり、「何をやりたいのか」が見えてくるはずだと、自身の経験から皆さんに自信を持ってお伝えしたいです。
【注釈】
①インキュベーションオフィス:起業や創業をするために活動する入居者を支援する施設のこと。安価な貸与とセットでるコンサルティングや各種の支援施策を用意しているところもある。
②地域ドミナント型:チェーンストアがひとつの地域に集中して出店する戦略
③ダイバーシティ&インクルージョン:組織の中で多様性を高めるだけでなく、そこに属する人が個人として尊重されながら、構成員の一人としてその違いを活かし、力が発揮できるように積極的に環境整備や働きかけを行っていこうという考え方
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