その時々の最適解を積み上げる、そんなキャリアの歩み方

身近にいそうな誰かの人生観をはじめとしたキャリアストーリーをお届けするインタビュー記事。第27回は、広告代理店から起業、人材派遣会社を経てWebサービス企業で勤務している大澤さん。途中でキャリアコンサルタントの資格も取得し、人事として働くこと、キャリアを考える上で大事にしていることを語っていただいた。

 

得意科目となんとなく良さそう、で進学先を決定

 

医学部を目指していた高校時代は塾中心の生活を送っていました。

社会に役立つ存在になりたいといった高尚な想いからではなく、困っている人とそうでない人をわけへだてなく助ける医師という仕事が純粋に素敵だなと思ったのと、当時見ていたドラマの影響が大きいですね(笑)。

 

理系を選んだのも文系がからっきしダメだったから。

ただ、宇宙とか化学とかそういうのはピンとこなかったので、進路を選んだあとも「文系の方がよかったかな」と後悔することもありました。

 

結果的に医学部は受験せず、バイオ系の学科に進むことにしました。

家計的に成績的にも医学部が厳しかったのと、遺伝解析の技術がさらに進歩すれば幅広い領域の医療に活かせるという話を聞いて、「ヒトがダメなら生物だ!」とアタマを切り替えました。

 

 

勉強を避けてインターン/バイトに明け暮れた大学生活

 

大学には「1日8時間勉強するのが日課」みたいな人が多くて、正直肌が合いませんでしたね。

将来、研究職になったり研究所に入る人が多くて、根本的に自分とタイプが違うような……。これはマズイと思って、いかに勉強しないで卒業するかを毎日必死に考えていました(笑)。

 

アルバイトはいろいろやりましたね。パスタ屋さん、ホテルの日雇いバイトや塾講師など。

塾で知り合った講師仲間とは本当に仲良くなって、一緒にベンチャーを立ち上げて当時成長していたアルバイト情報誌のWeb版を作ろうとしていました。

リリース直前にメンバーの一人が倒れてしまって頓挫しましたが、勉強以外のことに夢中になって将来のことを考え始めたのはこのときの経験が大きいかもしれません。

 

また、同じ時期に参加したマクドナルドのインターンも印象に残っています。

週に1回でしたが、半年間にわたってファイナンスやマーケティングを勉強させてもらいました。数ある講座の一つに自己分析カリキュラムがあって、自分のキャリアについて考えるきっかけになりましたね。

 

大学3年生になって就活ではコンサルティング業界を中心に考えていました。コンサルティングという仕事に興味を持つようになったのは、医者を目指したときの感覚と似ています。

助けを必要としているのが人なのか法人なのかであって、悩みを聞いて適切な対処法を提案するということに違いはありません。「コンサル=人助け」という感覚で就職活動をするようになったのは、自分にとってすごく自然な流れでした。

 

当時はITが盛り上がっていたので、国内のITコンサル・戦略コンサルファームを中心にアプローチしていましたが、インターンを受けて面白かった広告代理店の人にコンサルタントのような働き方がしたいと言ったら、「全部うちでできるよ」と言われてすっかりその気に(笑)。

 

結果や反応がダイレクトに見える社風が性格に合っていましたし、そのとき決める進路が絶対のものではなく、先々につながる有意義な経験を積めそうだったので入社を決めました。

採用担当者も自分たちのことを「うちは社会人学校だから」と笑っていましたしね。「やりたいことが見つかったら辞めよう」ぐらいのスタンスでした。

 

 

IT畑から人事に転身、今後に繋がる転換点

 

研修後は、ヒューマンリソース領域のWebサービスのWebディレクター担当として、各メディアと外部の制作ベンダーの間に入ってサイトの要件定義や業務設計をしていました。

サービスが紙からWebに移行している時期だったこともあって、新卒とはいえ理系出身の私が重宝されたみたいです。

 

入社5年ほど経ったとき、「IT部門に必要な人材を配置することで現場を忙しさから守りたい」と思ったのをきっかけに、人事部門に異動願いを出しました。

当時はプロジェクトリーダーとしてメンバー管理をしていましたが、一人ひとりのメンバーを選んでいたのは人事部。

そのため、プロジェクトは人事に左右されることもあり、「人事次第でプロジェクトの命運が決まるなら、その検討段階から携わりたい!」と思ったのが異動願いのきっかけです。

 

ちょうど自社がホールディングス化するタイミングだったこともあって異動は叶いました。ホールディングス化のお手伝いからスタートし、まずはエンジニアやプログラマなどのIT人材の採用業務を担当しました。

 

現場が必要とする人材を採用することが「現場を守る」ことにもつながりましたし、異動前には200人弱だった組織があっという間に600人超に成長したのもうれしかったですね。

自分の仕事が目に見えましたし、現場のモチベーションも上がって「俺たちがグループのWebサービスを支えるぞ!」というグループ全体を牽引する組織を作るのに貢献しているという自負も生まれました。

 

ただ、1日10人、面接だけで1日10時間かけるような生活を5年もやっていると……飽きてしまったのも正直なところです(笑)。

採用活動そのものは時代によって手法が変わるので楽しかったのですが、キャリアに行き詰まっているなと思いましたし、毎日を単調に感じてしまって転職活動を始めました。

 

 

その時々に「これだ!」を選んで至った現在

 

しばらく「この会社だ!」と思えるような会社が見つからず、もんもんとしていました。

そんな時に、同僚に誘われて参加した勉強会で意気投合した仲間と3人で人材紹介会社を立ち上げることにしました。

採用代行や採用コンサルがメインではありましたが、企業にオファーを出して面談してマッチングしてという人材紹介サービスも始めたことで、また一つ新しいフェーズに進めた気がしたのを覚えています。

 

前職からも依頼を受けるなどしてかなり忙しく、土日もない生活を送っているうちに自分だけで回せない案件が増えてきました。

人を雇うことも考えましたが、私がなりたかったのは経営者ではありませんでしたし、いつまでたっても人事部の制度設計といった上流工程の相談はきません。前職の企業ブランドとこれまで培ってきた採用業務のノウハウで稼いでいるだけだったことに気づきました。

 

そんなとき前職のマネージャーが声をかけてくれて、大手派遣会社に入社することに。

売上が600億円ぐらいあるのに人事部がないという会社だったので、スタッフ教育から制度運用の整備など、責任者として制度構築や体制づくりに取り組めたのはいい経験になりました。製造業に特化した派遣会社ということもあって、ビジネスモデルがシンプルだったのも大きかったですね。

 

ただ、なじみのない業界の会社だったので、企業DNAに共感しながら腰をすえて人事制度を作りたいと考え、大手Webサービス企業に転職しました。

変わることをポジティブにとらえ、変わり続けようという確かな意志があり、変化を実践することの難易度が高そうだと感じられたのが決め手です。エンジニアが多い会社だったので、自分の出自と相性がよいのもポイントでした。

 

現在は社内のヒアリングや分析、ニーズの確認を繰り返して、エンジニアの待遇改善や全社横断の人事施策の検討など、様々な企画業務に携わらせてもらっています。

中途入社だからこそ感じた違和感や客観性を大切にしているため、社内的には“なんだか不思議な動きをしている人”という印象があるかもしれません。

エンジニアのスキル定義やキャリアの歩み方はこれから変わっていきますし、それにともなって人事制度も変化していくべきだと考えています。周囲や環境に恵まれて、客観性を忘れずに企画してほしいといってもらえているので、楽しみながらやっています。

 

 

キャリアを考える時に大事にしていること

 

キャリアコンサルタントの資格は、広告代理店を辞めたあとすぐに取得しました。

人事畑を長く続けていくつもりでいたので仕事柄必要だと感じたことと、転職が“その人”にとって本当によいことなのか、理論的に考えられるようになりたかったからです。

 

人材紹介や採用活動は、転職することそれ自体をゴールに掲げがちなので、点ではなく線でキャリアというものを理解したかったんです。応募者にしっかり寄り添ったエージェントになりたい、そう思って資格を取りました。

 

キャリアコンサルティングにはいくつかの流派がありますが、私はスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツによって提唱された「計画的偶発性理論」が一番しっくりきています。

 

前もって計画した自身のキャリアは予想できない偶発的なことによって左右されるため、自分のスキルは? 強み・弱みは? 自分のWILLは? 何が好きで何が嫌い? といった判断基準を明確にしておくことで、その時々に浮かび上がってきた選択肢の中で正しいものを選んでいこうというポジティブな考え方です。

 

事実、目標を立てたいけれどやりたいことがなくて目指す場所がわからずにいる人や、どのポジションが自分にとって最適なのか気づけずに苦しんでいる人が回りにたくさんいます。

そういった方々の悩みを解消するための施策を生み出し、一人ひとりの可能性を広げるお手伝いができればうれしいです。

会社の目標に一丸となって向かうやり方がすべてではなく、その場で「よい」と判断した選択を重ねてキャリアを作っていくのもありなんだよ、ということを伝えていきたいですね。

 

 

★キャリアにモヤモヤしている方★

今回の櫻井さんもインタビュー内でご紹介してくださいました

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