アートを通じて多くの「初めて」を体験する、刺激的な日々

 

身近にいそうな誰かの人生観をはじめとしたキャリアストーリーをお届けするインタビュー記事。第13回は、アートを軸に人生を充実させている中村 幸雄さん。仕事一筋だった生活から、どのようにして仕事では関わらないような人たちと交友を広げて楽しく過ごすようになったのか、語っていただいた。

 

仕事一筋のときに、偶然出会ったアート

 

“なりたい自分”がイメージできないまま就職活動をしていた学生時代。

漠然と「テレビ局なんていいなあ」と思っていましたが、特に理由はありませんでしたし、ただの興味を仕事にするのもちょっとと思って地元・岐阜でアルミ缶メーカーに入社しました。

 

20代のころは目の前の仕事をひたすらこなしていく毎日でした。

そんな中、入社した後もテレビ局への未練が残っていた私を見かねた上司が、知り合いのテレビ局関係者を紹介してくれることになったのですが、先方の方が体調を崩してしまって自然と立ち消えに。

「縁がなかった」と残念がる程度しか未練がなかったことに気づき、ようやく目の前の仕事としっかり向き合えるようになりました。

 

そこからしばらく仕事は仕事というように割り切って働き、息抜きとして休みの日に野球をしていましたが、下の世代のメンバーがだんだん練習に来なくなってしまったことから新しくテニススクールに通い始めます。

 

そこで知り合った人に誘われて、名古屋の音楽コンサートに通うようになりました。

その流れでフラッと愛知芸術文化センターに立ち寄ったのがアートとの出会いです。
※愛知芸術文化センターとは、愛知県にある美術館やコンサートホールなどが複合的に備わっている文化施設のことです。

 

作品そのものの魅力はもちろん、さまざまな企業が文化・芸術の支援を行ない、利益を社会に還元する企業の取り組みを知って、作品の良し悪しとは別の次元でいろいろな可能性がある分野だということを知りました。

 

トヨタ自動車が主催するアートマネジメントセミナーに参加したり、企業主催のワークショップやイベントのお手伝いをするうちに、アーティストの方々と一緒にワークショップをするようにまで。

「好きな人に送る言葉」を書いた紙を箱に入れ、紙を引いた人が隣の参加者に感情を込めて愛の言葉を伝える──そんな即興劇のようなこともやりましたね。

 

ワークショップ自体も面白かったのですが、だんだんと知り合いが増え、コミュニティができ、年齢・性別を問わずいろいろな人と友達になれたのが一番の財産かもしれません。

 

 

転勤してもアートを通じて多くの「初めて」を体験

 

同時期に、アートゼミに通うようになり、美術、音楽、アートのワークショップや学術的なことを学びました。

2年ほどしたあるとき、岐阜県可児市で市民と行政が事業構想から文化施設を建設するまでを協働するプロジェクトが進んでいることを知りました。

 

開館前に、劇場運営のサポートをする市民団体が立ち上がると聞き、これまでに身につけた経験やネットワークを活かせると思って参加することにします。可児市は地元でしたしね。

劇場総監督や関係者、アーティストの方々が取り組む斬新な社会貢献型の劇場経営や、イベントを通じてコミュニケーションツールとしてのアートの可能性、アーティストとの交流など、平日の夜や週末に多くのワクワクする日常の中の非日常に身を置くことになりました。

 

このときの経験から、仕事の都合で転勤したとしてもアートを通じて地域コミュニティに貢献できるという自信がつきました。

他にも名古屋圏で地域の資源を活かした学び場を展開する「大ナゴヤ大学」に参加したり、映画祭の実行委員長をやったり、とにかくいろいろやっていました。

 

その後、茨城県に転勤になりましたが、せっかく地元を離れたのだからここでしか出会えない人と積極的に知り合いになろうと、とにかく前向きでしたね。

中でも、水戸で25年続く「一会倶楽部」という異業種交流会に参加するようになって、急激に友人が増えました。

 

あるときの会合で両脇に座っていた人が地域の演劇の世界で活躍している方で、話をしているうちになぜか私が舞台に出ることに(笑)。

ちゃんとチケットを販売するような“本気”の演劇でしたが、いざやってみると本当に楽しくて。

結局東京に転勤になるまで継続してやっていました。

 

東京でも、演劇関係の知り合いやアート関連の知り合いから誘われる形で、震災の復興支援や都内のイベントに参加するなど、本当にいろいろな人と出会い、多岐にわたる「初めて」を体験する機会に恵まれています。

 

 

常に「今が最高」と言える、そんな生き方を

 

私自身、これまで一度も転職をしたことがありません。

気付いてみれば30数年同じ仕事、海外経験もないので、人から見たら平坦な人生を送っているかもしれません(笑)。

 

ただ、仕事の時間以外を自分の意思で充実させること、そして人との出会いを大切にすることで、いくらでも楽しみながら豊かな人生を送ることができます。

“日々の小さな積み重ね=人生=キャリア”と考えれば、無理にキャリアチェンジをしなくても積極的に行動することで自分の好きなことがやれている──そんな毎日の過ごし方もアリですよね。

 

これからは自分自身がプラットフォームとして人と人をつなげたり、イベントをシェアするなどして面白いことをしている人同士をリンクしたいです。

50代となったたいまが、一番好奇心が強いかもしれませんね。

 

常に今が最高と言えるように、これからも面白そうなこと・人・ものの「初めて」を探し求めて一歩を踏み出していきたいと思っています。